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マダム犬走の「ひとめ惚れ!ものがたり」マダム犬走の「ひとめ惚れ!ものがたり」

ファッションへのこだわりはもちろんのこと、美容情報からおいしいスイーツまで、幅広いジャンルに鋭いアンテナを張り巡らしている犬走さんが、心ひかれる逸品や、注目アイテムをご紹介します。今回は、暗闇のなかの対話です。

Vol.79 暗闇のなかの対話

 「真っ暗な光のない世界って、皆さんはイメージできますか? 照明や電子機器の光に囲まれた毎日のなかでは、想像する機会すらほとんどありませんよね。でも、光を完全に遮断した非日常の空間に身をおき、何も見えないからこそ見えてくるもの、感じ取れる感覚を楽しめるイベントがあるんです。その名も、暗闇のソーシャルエンターテインメント『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』。約30年前にドイツの哲学博士の発案で生まれ、これまでに世界39か国以上で800万人を超える人々が参加しているのだそう。私も東京・外苑前にある会場に出かけ、“純度100%の暗闇”なるものを体感してきました」

 “暗闇のエキスパート”であるアテンド(視覚障がいをもつ方)のサポートのもと、8名程度のグループで暗闇のなかのさまざまなシーンを体験するこのイベント。まずは薄暗い部屋で、自分の身長に合う白杖(はくじょう)選びからスタートしました。「それを片手に、もう片方の手を前の人の肩にかけて真っ暗闇の空間へ入っていったのですが、足を踏み入れた途端、距離感がまったくつかめません! いきなり新鮮な驚きを感じながらも慎重に進むと、どこからともなく木々のグリーンの香りがしてきました。白杖や足の裏から伝わってくるのは、凸凹とした地面の感触。鳥のさえずりや、川のせせらぎらしき音も聞こえてきます。『ここは、森!?』 目からの情報が遮断されているぶん、嗅覚や触覚、聴覚がフル稼働し、イメージがどんどん膨らんでいきます。そんな“想像の森”を心の赴くままに散策。でも、何もしなければすぐに人にぶつかってしまいます。そこでアテンドさんが教えてくださった、暗闇での伝達方法を実践。『犬さん、ここでーす』『前に居るのは誰ですか?』 声をかけ合っているうちに、自然と相手の声に意識が集中。お互いの様子を気遣い助け合う気持ちが、不思議なくらい素直に行動となって表れ、コミュニケーションの大切さをひしひしと感じました」

 続いて、シーンの異なる空間へ。「次なるスペースは、芝生の広場・・・といっても、あくまで私が想像した世界の中での広場です(笑)。ここではグループ全員でゲームにチャレンジしました。真っ暗闇でゲームを成功させるのは至難の業ですから、みんなが一致団結。余計なことを考えず、シンプルに目標に向かって力を合わせ、ほんの数十分前に初めて出会ったとは思えないほどグループがひとつになれた気がしました。さらに次のスペースに進むと、そこはなんと暗闇のカフェ。『このワインは赤? ロゼ?』『グラスのどこまで注げたかわからなーい』 そんな会話が飛び交うなか、驚きだったのがお会計。アテンドさんたちはいくらのお札なのかをちょっとした手触りで、いとも簡単に読み取ります。視覚で認識することだけが当たり前だった自分にハッとし、物事の方法や手段は本当にいろいろあるのだと、あらためて気づかされました」

 約90分間の暗闇体験は、刺激と発見の連続だったという犬走さん。「今回のグループは偶然にも全員女性でしたが、男性が入った場合の違いもおもしろそうです。また、とても興味深かったのが、アテンドさんたちのきめ細やかな感性を生かしてつくられた品々。会津の職人さんとコラボレートしたお椀は唇に当たる感触などにとことんこだわり、肌触りのテイスティングを何度も繰り返したというタオルは触り心地のよさを追求しているそう。私は、今回サポートしてくださったアテンドさんの記憶にある大好きな夕陽の色と同じ、バーミリオンカラーのタオル。そして、『みるということ』というタイトルが心に留まった書籍を自分へのお土産にしました。暗闇という私にとっての異世界で貴重な体験をさせてくれたこのイベント。今回伺った外苑前での開催は8月末までだそうですから、皆さんもよかったら足を運んでみてはいかがでしょう?」


 このコラムは今回が最終回。「皆さん、これまで本当にありがとうございました! 今振り返ると、6年半とは思えないほどアッという間でした。毎月のご紹介は私自身もたくさんの刺激をいただき、『美しいもの、おもしろいものをもっと見つけたい!』と、探求心をかき立てられました。何ごとにも好奇心旺盛であるのが、私のモットー。これからもその気持ちをもち続け、ワクワクと心をときめかせ続けていきたいと思っています」

[更新日時 2017.6.23]

 

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