日本でもエステやスパのメニューに登場し、人気が高まっている「アーユルヴェーダ」。本来は、5000年前に南インドで生まれた、世界最古の体系的な伝統医学です。インドで体験する本格的なアーユルヴェーダの施術はPrecious7月号本誌でも紹介され、大きな反響を呼びました。健康で幸せな毎日を送るために、心と体をどうケアすればよいのか。本場のアーユルヴェーダクリニックに何度も訪れている超リピーターの大石敦子さんが、その現場を詳細にレポートします。
撮影/KINTA KIMURA・文/大石敦子Vol.03
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「アーユルヴェーダ」がただのインド式オイル・マッサージではなく、心と身体の健康を創るホリスティックな療法であることは、前回まででご理解いただけたでしょうか?
今回は、アーユルヴェーダ療法の3本柱のひとつである「食事法」についてお話します。
インドのクリニックを訪れると、初回の長い問診・脈診の後、ドクターがその人の体の状態に合わせたプログラムをつくりながら「食事・エクササイズ・トリートメント」について、いろいろな指示を出します。その中で、特に細かく指示されるのが「食事法」なのです。人間の身体は食べる物が材料です。だからといって好き嫌いなしに食べればいいわけではなく、自分の身体に適切なものをバランスよく食べることが、まずは健康をつくる第一歩です。何がその人の身体に適切か…ということは、脈診で読み取るその人のドーシャ・タイプ(体質)で決められます。
人はドーシャと呼ばれるヴァータ(風)・ピッタ(火)・カパ(水)の3種類の生命エネルギーから成り立っていて、だれもがこの3つの生命エネルギーを持っています。そしてドーシャのどのタイプを強く持つかでその人の体質が決まる、と、アーユルヴェーダでは考えます。つまり、どの生命エネルギーが多い、少ないかが問題なのではなく、その人にあった生命エネルギー・バランスを保てているかが重要なのです。
さらにドーシャは体質だけでなく、気質も表します。風・火・水に例えられているので、それをイメージすると、なんとなく分かって頂けるかもしれません。例えば、風のヴァータを多く持っている人は、軽く冷えやすいので、身体を冷やす食べ物や消化の悪い重い食べ物は避けます。気質としては、情報収集が得意で動き回るタイプ。つい忙しく働き過ぎて疲労を溜めがちなので、働き過ぎには特に気をつけなければなりません。
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人は、生まれつきのドーシャのバランスを保って生活しているのであれば、食べた物が適切に消化され、要らない物は排泄されて、身体に何も溜め込まずに健康に過ごせます。しかし、ヴァータの人が、身体を冷やしたり、働き過ぎたりすると、ヴァータが増え過ぎてドーシャのバランスを失います。ドーシャがアンバランスになると、すべてのタイプが消化機能の低下を起こします。消化できなかった分は毒素となり、体内の血管やリンパ管をふさぐようになってしまいます。乱れたドーシャのタイプによって疾患の出方(場所)が違うので、ちょっとした変化を見逃さなければ、病気になるかなり手前で防ぐことができます。それが「アーユルヴェーダ」のすごいところです!そして、経験を積んだアーユルヴェーダ医ならドーシャのアンバランスは脈診で的確に分かるわけです。
ドクターの指示する食事法の目的は、とにかく溜まった毒素や過剰なドーシャを排泄することに尽きるので、消化が良く、体内クリーニング効果が高い食材を使ったものが多くなります。クリニックがある場所がインドやスリランカなので、滞在中に出される食事はヴェジタリアンのインド料理。野菜は肉や魚に比べると格段に消化は良いし、野菜の酵素や繊維質が体内の掃除をしてくれます。野菜の中でも重い(消化に時間がかかる)かぼちゃや蓮根などは食べないようにと言われることもあり、体質やそのときの状況で、食べ物については本当に細かく指示されます。また、生のものは火を通したものより消化が悪いので、生野菜は夕食のメニューに加わらないことが多いようです。
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インド料理に必ず使われるスパイスは、すべてが薬のようなものです。特にターメリック(うこん)は万能。血液を浄化し、消化を助け、抗炎症作用ももつスグレもの。アトピー性皮膚炎が出ていたときには、ターメリックを混ぜたオイルを処方され、顔をまっ黄色にして過ごしていた私でした。クミンも消化を強力に助け、コリアンダーは利尿作用に優れています。インド料理には、これらのスパイスが何種類も大量に入っているので、毎食薬も食べているわけです。スパイスを摂り始めると、にぶっていた代謝が瞬く間に良くなっていきます。最初は抵抗があるかもしれませんが、スパイスは慣れると結構病みつきになるし、特に夏は、スパイスの刺激が食欲を高めてくれ、気持ち良く汗もかかせてくれるので、暑い夏も元気に乗り切れます。また、スパイスさえそろえれば、インド料理はいとも簡単につくれるので、手軽に本格的な薬膳が家でできてしまうのも魅力です。アーユルヴェティックな食事で身体が変わっていくのを実感した私は、自分にとっての「適切な食事」というものについて、今もいろいろと研究しています。
*アーユルヴェーダ
サンスクリット語の「アーユス(生命)」と「ヴェーダ(真理・科学)」を組み合わせた『生命の科学』の意味。約5000年前に南インドで発祥したインド哲学を基盤にした世界最古の体系的な伝統医学。
大石敦子(おおいしあつこ)
リュディック・ホリスティック・ヘルス・デザイン代表
1958年生まれ。ミラノでのコーディネーター、海外ブランドのPRオフィス運営を経て、2006年からアーユルヴェーダに集中して取り組む。南インド・カリカットでの1ヶ月滞在をはじめ、スリランカも含めた5箇所の施設で滞在治療を受ける。
またインドのワンネス・ユニバーシティにてスピリチュアル・ワークショップ「21日間プロセス」「レベル2」を受講。詳しくはHP「修行な日々」http://www.oishi-atsuko.comで。



