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孝美的買い物指南「暮らしにひとつ、私のお気に入り」孝美的買い物指南「暮らしにひとつ、私のお気に入り」

本誌でおなじみの松本孝美さんが、毎月手に入れた小物や食材など「お気に入りのお買い物」を公開! Vol.138は道明の帯締めです。

撮影・文/松本孝美Vol.138 道明の帯締め

 今回ご紹介するお気に入りは東京・上野池之端にある『道明』さんの帯締めです。40歳を過ぎた頃から着物を自分で購入するようになって、こちらの帯締めが大変結びやすいからと着物に精通されている方からすすめて頂いたのがきっかけとなり、以来少しずつ買い足しています。デパートでも取り扱いはありますが、色とりどり、またさまざまな組みの帯締めの中からコレ! と決める醍醐味は本店に伺ってこそ、なのです。そして不思議なことに、自分が苦手としている色も『道明』さんに行けば、あら、良いかも! と思えるのです。着物を着るようになってわかったのですが、上質な素材を確かな技術で染め上げた美しい色は見ているだけで気持ちが晴れ晴れとするし、苦手だと思っていた色にも興味が湧いてくるのです。これを身に着けない手はない! 食わず嫌いでいたものが、その産地で新鮮なものを口にした途端、「今までのは何だったのだろう?」っていうのにちょっと似てるかも?

 いろいろな組み、銘のある帯締めの中でも一番のお気に入りは以前コラムでも登場した「三井寺」。 画像では一本の帯に三種類をのせていますが、どれも良く合ってそれぞれの帯締めで表情が変わるのがわかって頂けると思います。他の帯の時にも迷った時にはこれ、というくらい重宝しています。個性的に見えますが、「三井寺」という銘は千百余年の歴史を持つ滋賀県の三井寺に残された織紐の意匠からつけられているので、実はクラシックな組みなのですね。組みで表している色のぼかしの繊細さで優しく、白糸部分のすっきりとした清潔感のある余白は着物姿を美しくまとめてくれます。何代にもわたり全国の神社仏閣に保存されている組紐の調査、復元をされている『道明』さんの帯締めで、その確かな技術で表現された美しさと共に歴史のロマンまでも身にまとうことが出来ます。

 帯締めが素敵なのはもちろん、その包みもまた素敵なのも老舗ならでは。包装紙を解くと「御糸組紐司」と刷られた薄紙に包まれた箱が現れます。そしてその下には熨斗が付けられた掛け紙。松竹梅に橘、鶴やさざ波の柄が描かれています。蓋を開けるとまた薄紙が掛けられていて、その下に紅白の絹糸で台紙に留められた帯締めが現れます。包みのひとつひとつに、長く大事にしてもらってねというお店からの思いが込められているような・・・。これは一番最近に購入した礼装用の帯締めですが、おろす日を楽しみにしばらくはこのままに。

 最後の画像は頒布品の紹介と一緒に定期的に送って下さる“道明の色名シリーズ”という色見本です。帯締めを組むのに使用する絹糸が貼られているのですが、その美しさとともに楽しめるのがそれぞれにつけられた色の名前。刈安、青朽葉、裏葉、蘇芳香など響きの良い色名がたくさんあり、その説明も書かれています。例えば深い緑色の「海松色(みるいろ)」。この色見本で初めて知った単語ですが、パソコンで「みるいろ」と打ったらすぐに「海松」が出てきました。色見本の説明文には、<海松のような青黒がかった緑をいいます。海松は日本中の浅海の岩の上に生える海藻の一種です。「万葉集」にも詠まれておりますが、服色名としてあらわれるのは平安以降と思われます>と書かれています。色名ひとつとってもやっぱり日本は良いなぁと再確認。

 余談ですがこの「海松」を検索していたら、今は「ミル」と呼ばれていて虫歯や歯周病の原因を作らせない画期的な成分、ミルレクチンが発見されました! というサイトを見つけました。万葉集の昔から現代までロマンは尽きない! 今年は着物を着る機会をもう少し増やそうと思います。老舗の帯締めとそのロマンとともに。

[更新日時 2017.2.7]

 

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